半濁拗促物件



 人間の発音というのはおそらく無限に近いものがあると思われるわけで,それを有限の文字であらわそうとするのは土台ムリなことであるような気がするわけでした。

 文字というものが出来てからは,その文字に発音をあわせるということが行なわれてきて,基本的には文字であらわされる発音しか使わないというのが表音文字文化だと思われるんでした。
 しかし異文化新文化が入ってくるとそれではうまくあらわせない発音がでてくるので,それに対しては文字をちょっと工夫するという努力がされてきたんだろうと思われるんでした。

 仮名文字の濁点とか半濁点とか拗音促音というものはそういった工夫の成果だと思われるでありますね。最近では従来の濁点では足りなくて「あ」とか「う」に濁点がついたりしているわけでありますけれども。

 という本文とはあまり関係のない長い前置きのあとで,上の物件であります。
 どうやら従業員を急募しているようで,労働条件が示されているわけですけれども,
「時給 パ〇〇円〜一〇〇〇円」
というのがちょっと気になるところなんでした。

 普通に考えれば「800円〜1000円」のような気がするわけですけれども,どうしてこうなってしまったんでありましょうか。

 横に「八〇〇」と書こうとして,横幅が足りないと思ったのか。「八〇〇」は書けるとしても,その下に横書きで「一〇〇〇」と書こうとするとムリあるいはデザイン的におかしいと思ったのか。

 あるいは「八」の脇の「○」は生きていて,「時給8000円〜1000円」という高額バイトなのかもしれないでありますね。いったいどんな仕事なのか。キケンな香りもしてきそうであります。

 それともこれは「パッピャク円」というこの地域だけで通じる特殊なお金なのか。パッピャク円ではどんな買い物ができるんでありましょうか。

 はたまたこれはあくまでも「パ」であって,「パート」を意味しているのかもしれないんでした。
 そうすると「パ 00円〜1000円」ということになって,パートの人は無給で働かなくてはいけない可能性があるわけで,さらにキケンな感じがしてくるんでした。

 そう見てしまうと「周一回でもOK」というのも何かワナなんではあるまいかと思ってしまうでありますね。「周」というのが「週」なのかどうか。週に一回だと思って働き出すと
「この『周』ってのはなぁ。お日様が一回りする,つまりは『一日』ってことだぁ。これからは毎日,時給00円で働いてもらうぜぇ」
などと言われてしまうのかもしれないんでした。
(※もちろんこれは私の妄想であり,実際にはとてもステキな労働環境であろうと思われます。たぶん。)


 こちらは「ファッションの森 エレガンス ピユア」さんらしいんでした。
「ピュア」と書きたかったんではないかと思ってしまうわけですけれども,そうでもないのか。「ピュア」だとすると,小さな「ュ」は看板屋さんの都合で使えなかったんでありましょうか。

 もともとが一文字目だけを大きくするというデザインらしいですけれども,それに気をとられて「ュ」を小さくするのを忘れてしまったんでありましょうか。

 あるいはこれは一文字目だけを大きくしているんではなく,「レガンス」「ユア」というのはそのまま小さな文字で,拗音あるいは促音として発音しなければならないんでありましょうか。
「ピユア」はまだよさそうですけれども「エレガンス」をどのように発音するのか,ちょっと聞いてみたいところではあります。


 こちらは新幹線の車窓などからおなじみの「727」であります。車窓からは見るものの,それ以外ではほとんど見かけることのないナゾの化粧品でありますね。まぁ,私は化粧品自体,見ることがあまりありませんけれども。
「727」というのは,そこの社長の誕生日が7月27日だから…ということらしいでありますね。それはともかく。

 物件は車窓からではなく,街なかで見かけたものなんでした。カタカナで書く場合は,真ん中の「2」が小さいのにあわせて「ッー」も小さくなるんでありますね。

 しかし,その表記だと「セブンッ」と促音表記をしているように見えてしまうんでした。「72727」にすると「セブンッ−セブンッ−セブン」とウルトラセブンの歌を歌っているようになってしまいそうであります。

 もともとこの写真は「727」のカンバンの下で「七五三」の着付をするというあたりがオモシロいと思って七五三ネタとして撮っていたものでありますけれども,その前に出してしまうんでした。

「パ○○」は新潟市中央区・関屋大川前2あたり。
「ピユア」は新潟市東区・太平3あたり。
「727」は新潟市中央区・南万代町あたり。