グルメ物件



「グルメブーム」というのがいつ頃始まったんであったのかよく憶えていませんけれども,ブームが去ったという話は聞かないし景気が悪くて生活が苦しいと言いながらも食に関する情報はあふれているわけで,もはやブームという一過性のものではなくなってしまったと思われるんでした。
 まぁ,グルメというのはそれに縁のある人とない人とがハッキリとわかれたりしているものでもあるわけですけれども。

 そんなわけで上の物件でありますけれども,「肉とんかつの店」ということで,これはもう全くおかしなところの無いごく普通のカンバンなわけでした。肉屋さんではだいたいトンカツも売ってたりするし。
 ただ,ちょっと区切りをかえてやると「肉」と「んかつ」の店のように見えてしまうなぁ,と思っただけなんでした。
 確かに「肉ととんかつの店」だと「と」の字がちょっとウルサイ感じがするんでありますね。舌かみそうだし。

 それで「肉とんかつ」とくっつけたような気がするわけですけれども,はたしてそうなのか。実は本当に「んかつ」という商品があるのかもしれないと思ったりするんでした。

 いつもはニコニコと愛想よく一般の客に普通の「とんかつ」を売っているお店。しかし
「オヤジ。この店ではあの幻の『んかつ』が食えるそうだな」
 などと言ってくる美食家と呼ばれる人たちが時折おとずれるんでありますね。するとオヤジの目もキラリと光って
「どこでその話を…」
「ふふふ。(いや,カンバンに書いてあるからなんだけど…黙っとくか)」
「まぁいいでしょう。しかしこの『んかつ』をタダで食わせるわけにはいきませんな。私との包丁3本勝負に勝ったらお出し致しましょう」
「のぞむところよっ。いざっ」
「おうっ」
 ということで,グルメ漫画の定番である料理バトルが繰り広げられることになるのかもしれないんでした。
 しれなくないか。だいたい何なのか。料理バトルって。


 こちらは「日本茶とはちみつの店 Tea&Bee」さんであります。
 日本茶とはちみつというのが合うのかどうかグルメでない私にはわかりませんけれども,面白い組み合わせであるなぁと思ったわけでした。
 別にはちみつをなめながら日本茶を飲むわけでもないのかもしれませが。喫茶店というわけでもなさそうだし。

 そしてこれも英語に疎い私にはわかりませんけれども「Bee」というのははちみつでなく蜂そのものなんではあるまいかと思ったりもしたんでした。
 まぁ語呂はいいし,取扱商品と店名は必ず一致しなければならないというものでもないですけれども。

 あるいは,本当は「日本茶と蜂の店」なんでありましょうか。確かに,蜂をボリボリ食べながら日本茶を飲む,の方がどちらかというと合っているような気もするでありますね。イナゴとか蜂の子なんかは地域によってよく食べられてもいるわけだし。

 実際がどういうお店なのかはわからないので,興味のある方は行ってみるとよろしいかもしれないんでした。


 こちらは「お願い この用地内に犬のフンをさせないで下さいということで,毎度おなじみの「犬のフン」カンバンでありますね。

 ただ,通常この手のカンバンでは「フン」は犬の後ろ側にあることが多いのに対して,こちらのカンバンでは犬の前にあるんでした。
 そして舌を出しておすわりをして,すましているんでありますね。あたかも「よし」の声を待ってそれを食べ始めるかのように。

 外国の人がこれを見た場合,「犬のフンをさせないで下さい」ではなく「犬にフンを食べさせないで下さい」と解釈する可能性が大ではないかと思われるんでした。
 まぁ,それも注意として間違ってはいないことだと思いますけれども,わざわざ禁止するまでもなく,好んでフンを食べる犬もいないような気がするわけでした。よほどのグルメ犬でなければ。
 グルメというよりヘンタイ犬でありましょうか。かわいい顔してるのに。

 しかし,その背後にはなにやらありがたいお言葉が書かれているんでした。

「みんな すき」ということでありますね。
 ちょっと「ん」の字が微妙で,あるいは「み〜なが好き」とか,照れ笑いしながら「美奈が好きw」と言っているのかもしれませんけれども,ここは「全部好き」という意味合いであると受け取りたいところであります。

 そう。嫌いなものがないんでありますね。食べられる物ならフンでも食べるというこの姿勢であります。いやフンは食べられないかもしれませんが。

 偏見かもしれませんけれども,グルメな人というのは不自由であるように思えるでありますね。
 一般人がおいしいおいしいと思って食べているものを「いや。これは本来の味と比べると…」とか「素材のよさを十分に引き出しているとはいえない」とか「これには目に見えぬが肝心のものが欠けておる」とか「不味いっ。さげろっ」とか言い出すわけで,楽しめる領域が狭くなってしまっているような気がするわけでした。端的に言えば「好き嫌いのはげしい人」みたいな感じでありますね。

 そんなわけで「みんな すき」という姿勢は,単純に「食を楽しむ」ということの出来るという意味においてよりグルメな姿勢なんではあるまいかと思ったりもするわけなんでした。

「んかつ」は新潟市東区・山木戸4あたり。
「茶と蜂」は新潟市中央区・南万代町あたり。
「みんな」は新潟市東区・中山5あたり。