ふたり物件



 どうも見えにくい写真で申し訳ないところでありますけれども,主役は真ん中に写っている二本の木であります。
 どのような経緯でこういう配置になったのかはわかりませんけれども,この二本の木はフェンスによって隔てられているんでした。

 隔てられてはいますけれども,なんだかお互い求め合っているように見えるでありますね。
 フェンス向うの背の低い方は,腕(なのか?)を金網に差し入れて相手の腰(なのか?)に手を回しているかのようであります。
 こちら側の背の高い方は,相手を求めるあまり,頭(なのか?)が金網を突き抜けて向う側へ到達してしまっているんでした。

 フェンスにより引き裂かれた愛なんでありましょうか。ロミオとジュリエットかベルリンの壁か。障壁を乗り越えての逢瀬のようであります。

 いやむしろ,障壁があるからこそ燃える愛というのもあるんでありましょうか。障壁マニアのカップル。
 障壁が無くなってしまうと,意外とあっさりさめてしまったりするのかもしれないんでした。

 しかしこの木の様子を見ると,根元の方はつながっているような気もするでありますね。そうすると,このふたりは実は兄妹なのかもしれない。
 フェンスがいつの日か撤去されたときに判明するその事実。しかしその禁断の愛は,障壁マニアのふたりにとってはさらに燃え上がるための好障壁にすぎないのかもしれないんでした。


 こちらは,通常は道路沿いなんかに立っている反射ポールでありますけれども,ここは道路ではなく,建物わきの空きスペースなんでした。そこに,この二本がぽつんと置かれているんでした。

 片方はだいぶ破損しているので,おそらくはもうリタイヤしているんでありますね。ここで余生を過ごしているというところのようであります。

 もう片方はそれほど破損もしていないようでありますけれども,このふたつはペアだったんでありましょうか。片方が破損したときに,もう一方はそれに付き合ってリタイヤしたんでありましょうか。

 このたたずまい。なんだか,破損していない方は破損している方に優しいまなざしを送っているように見えてくるでありますね。

 共働きで長いこと頑張ってきた夫婦。年老いた奥さんが老人特有の症状におちいってしまい,それを介護するために仕事をやめた夫。といったところでありましょうか。
「おまえには苦労かけたなぁ。今度はワシがお前のことを見守るさ。壊れてしまっても,お前はお前さ」
 とでも言っているかのようであります。

 ああ。なんだか叙情派だぞ。まぁたまにはこんなのもよろしいか。

「兄妹」は新潟市中央区・明石2あたり。
「老夫婦」は新潟市中央区・下大川前通7あたり。