あき物件



 最近どうも時間の過ぎるのが速くて,この間春だったと思ったらもう秋なわけでした。このまま加速していって,時間の速度が光速を超えたらどうなるのかという気がするでありますね。何を言ってるのかわかりませんが。
 あるいはもっと庶民的に,時間もやはり高速道路料金が安くなってスピードを上げているんでありましょうか。してみると時間はETCをつけているんでありましょうか。これも何を言ってるのかわからないでありますね。
 まぁ,単に今年(2009年)の夏があんまり夏っぽくなかったということかもしれませんが。

 というよくわからない前フリはさておき,最初の物件であります。
「あき有ります。」
とのことで,状況からしておそらくは駐車場あるいはマンションに空きがありますということなんではないかと思われるんでした。

 ただ,なんとなくこのカンバンにはそれだけで終わらない風情のようなものが感じられるんでありますね。
 ひょっとしたらこれは「秋 有ります。」という,秋の到来を告知するカンバンなんではあるまいか。あるいは,秋という季節そのものを売っているところなんではあるまいか。などと思ってしまうんでした。

 カンバンが立てかけてある木も,もうちょっとすると紅葉してさらなる風情をかもし出すんではないかという気がするでありますね。この木,紅葉するのかどうかわかりませんが。

 道行く人の目をひきそんなことを思わせる時点で,このカンバンは少なくとも私を相手には成功していると思われるんでした。
 しかし,駐車場にしろマンションにしろ,それを必要としない人間にとってはカンバンとしての本来の効果を発揮できないところが,少し残念ではあるんでした。関係ないところに駐車場借りてもしょうがないしなぁ。


 一応芸術の秋ということで,こちらは新潟市美術館のカンバンであります。
 搬入口を示したりしているので一般向けのカンバンではないのかもしれませんけれども,表示部分が相当にひび割れているんでした。

「恐怖のぉ 新潟市美術館へぇ ようこそぉ〜。いひひひひ」
みたいな感じでありますね。

 一人で作品を見ながら歩いていると,通り過ぎたあと肖像画の瞳がギョロリと動いたり彫刻がゆっくり動き出したりしそうであります。そして展示室を出ようとしても出口がなく,気がつくと多くの彫像や肖像画に囲まれていて…。
 翌日には自分も彫像のひとつになっていて,美術館を一人で訪れる人を襲って仲間に引き入れるようになるのかもしれないんでした。

 もちろんこれは私の妄想であり,新潟市美術館を訪れても襲われたり彫像になったりはしないと思われます。たぶん。


 こちらは空家というか,売家であります。何かのお店をやっていたんだけれどもうまくいかず,手放してしまったんでありましょうか。
 まぁそれ自体はどうしようもないことなわけですけれども,残された建物のペイントが,派手なだけにより一層のわびしさ寂しさを感じさせてくれるんでした。これが日本のわびさびというものなんでありますね。違うか。

 これを見ていると,お店を始めるときの夢と希望に満ちた笑顔と,夢破れお店をたたんで去っていくときの寂しい背中が同時に見えてきそうであります。

 それはそれとして,この売家は売れるんでありましょうか。同じ傾向の人が買うならいいですけれども,そうでなければちょっと手に入れにくいでありますね。
 ペイントしなおすとしても,買った後に自己負担だろうし。もし同じ傾向だとしても,そういう人は既存のものは使いたがらないだろうし。

 やはりこれは元の持ち主が頑張って取り返すのが一番いいでありますね。SOULでなんとか頑張ってもらいたいものであります。同じ商売を同じ場所でしても,結果は同じかもしれないですけれども。


 こちらは特に「あき」ということでもないですけれども,一応時事モノなので今やっておいた方がいいかなと思ったんでした。

 今年(2009年)は新潟で国体をやるということで,県内各所で盛り上がっているんでした。村上市でも,トライアスロンだったかの大会が行なわれるらしいんでした。そんなわけで,物件は村上市版の国体ポスターであります。

 絵柄はいいんですけれども,このスローガンだかコピーだかはどうなのか。
「燃えつくせ! 君のパワーを村上で」
 …んー。言いたいことは十分に伝わってきているんでありますけれども,どうもモヤモヤとしてしまうんでありますね。

「君のパワーを」へつなげるんであれば,ここは普通なら「燃やしつくせ!」となるべきところでありますけれども,そうしないのはなぜなのか。
「燃えつくせ!」と「君のパワーを村上で」は別個のふたつの文なんでありましょうか。

 あるいは,ポスター完成直前まで「燃やしつくせ」だったんだけれども,それだと放火魔が出没して村上市が燃やしつくされてしまいそうで縁起が悪いということで,急遽変更したためにこうなってしまったんでありましょうか。

 実は私はこのポスターを見てから村上市内を歩いたわけですけれども,その辺のことを考えたらモヤモヤ状態が続いてしまって,集中して歩けなかったんでした。いやいつも集中して歩いてるわけでもないですけれども。
 だから,トライアスロン(だかなんだか)の選手たちもこのポスターを見てからスタートするとモヤモヤして記録が伸びないかもしれないので,見ないようにしておいた方がいいかもしれないんでした。スポーツ選手はそんなことでモヤモヤしたりしないのかもしれませんが。

「あき有ります」は新潟市中央区・本町通14あたり。
「恐怖の美術館」は新潟市中央区・西大畑町あたり。
「無念のソウル」は村上市・飯野1あたり。
「燃えつくせ!」は村上市・肴町あたり。