やっぱり物件



「飲酒運転で事故ったそうよ やっぱりね そうだよね」
だそうなんでした。

 飲酒運転による事故…というのは非情に重いテーマであるような気がするわけですけれども,この会話の主たちはなんだか妙に軽いんでした。「ついてるね のってるね」的な感じであります。

「やっぱりね」と思うくらいであれば,事前に止めてもらいたいものでありますけれども,なかなかそうはいかないのが世の中というものだと思われるんでした。

 それほど親しくない人の事故であれば,その程度の感想にしかならないのはしょうがないことのようであります。むしろ,口には決して出さないけれども「ざまぁ見なさい」という言葉がのどまで出てきているかのようでありますね。

 この標語の本来の意図としては「飲酒運転をすれば事故につながる」ことが「やっぱり」である,と言いたいんであろうと思われるんでした。
 しかし,「あの人のことだから,いつかは飲酒運転をして事故を起こすと思っていたらついにやったか」というのが「やっぱり」である,という風に受け取れてしまう軽さが,この標語をちょっと面白くしてしまっているような気がするわけでした。

 確かにこの道路はちょっと危なくて,後ろにお地蔵さんが見えているからには,かつて重大事故があったのだろうと思われるわけでした。
 しかしそういった重大事故でさえも,他人からすれば「やっぱりね」とか「あらかわいそう」で済んでしまうということ。それが逆に事故の怖さというものを象徴しているのかもしれず,実はそれがこの標語の真の意図なのかもしれないんでした。

 なんてことをグダグダと考えながら歩いていると事故にあって「やっぱりね。路上観察者はね…」などと言われてしまうかもしれないので,気をつけなければいけないんでした。


 こちらは
「ちょっとまて! そんなことして 楽しいの」
ということなんでした。

 中学2年生の発する疑問でありますね。まぁ,中2くらいだとわからないことも多いだろうし,それゆえ好奇心やら興味やらが膨らんでいる年頃であります。

 この文面は何やらとがめるような口調ではありますけれども,実は言葉の使い方を知らないだけで,それは純粋な好奇心なのかもしれないんでした。だから大人としては,聞かれたら丁寧に説明してあげるのがよろしいでありますね。

 そうすれば,このマジメな中学2年生も
「はー。そうですか。やっぱり楽しいんですか。いや実は僕もそうじゃないかと薄々思ってはいたんですが」
と納得し感謝してくれるかもしれないんでした。

 しかし,この言葉を発したときの中学2年生が目撃したのは何であったのか,「そんなこと」というのがどんなことであったのか,ちょっとドキドキするところではあります。説明できるようなことだったならいいんですけれども。

 突然部屋の扉を開けて,質問をしてくるかもしれない中学生。彼ら彼女らに「そんなことして 楽しいの」と聞かれたときに,あなたは答えられるでありましょうか。
「い,いや。ちょっとプロレスごっこを…」とか
「上四方固めの練習を…」とか
「縄抜けの練習を…」とか
「仮面舞踏会の準備を…」とか
オロオロしながらごまかしの答えを返しても,彼ら彼女らは失望するだけであります。

「うん。楽しいよ」 と自信を持ってひとこと答えてあげれば
「やっぱり!」
と,晴れ晴れとした笑顔を見せてくれるかもしれないんでした。

 実はこの写真を撮るときにはファインダーいっぱいに「そんなことして 楽しいの」と表示されていたわけで,シャッターを押すときにはちょっとヘコんだりもしたわけですけれども,そのあと「…うん。楽しいよ」とつぶやきながらこの場を後にしたわけでした。


 オマケ。
「あの人,やっぱり…」
「ねぇ。どう見てもねぇ…」
「不自然よねぇ…」
とか言われてそうな人の絵なんでした。いやそれだけなんですが。


「やっぱりね」は新潟市北区・松浜本町2あたり。
「そんなこと」は新潟市北区・松浜本町2あたり。
「ヅラ」は新潟市中央区・春日町あたり。