なまめか物件



 建物の壁面,特に雑居ビルなんかには,なんだか色々な配管やらメーターやらが並んでいたりするものであります。こちらもそういったビルだと思われるわけですけれども,その配管に目を奪われてしまったわけでした。

 なんともサイバーというか,サイバーってどういう意味かよくわかりませんけれども,そんな言葉が似合うような,ある種異様な美しさが見えるような気がするわけでした。

 入口を囲むパイプのラインもいいですけれども,さらによろしいのはメーターの見える右側であります。ではアップ。


 どうでありましょうか。この美しさ。
 枝分かれしたパイプが,3次元的多段クランクをしながら他のパイプをまたぎつつ様々な方向に向かうその様子は,迷路というか生物の血管やら神経線維を見るかのようであります。

 このように街なかにさりげなく現れた建物の血管というのは,何か特殊なナマメカしさというのを感じてしまうような気がするわけでした。もっと複雑なメカニックやら回路図やら巨大工場なんかにそういうのを感じる人もいるかもしれませんけれども。

 む。今気づいたのだけれども「なまめかしい」というのは「ナマ」の「メカ」すなわち「生きているメカニックのような様子」を表わしている言葉なのかもしれないでありますね。しれなくないか。


 こちらはビニールハウスの門番であります。いや別に門番じゃないような気もしますけれども,ビニールハウスの中に入ろうとすると
「ガピピー。コノサキ,シンニュウキンシデス。ソレイジョウチカヅクト,コウゲキシマス。ガピピー」 とか言ってレーザー光線を発射しそうな雰囲気でありますね。そうでもないか。

 しかし,機械のセリフというとどうしてもカタカナで書きたくなってしまうものであるなぁ。実際のしゃべるロボットというのは,もっとマシな音声合成で流暢にしゃべるのだろうけれども。
 でも,人間の場合でも外見とマッチしない声にはギョッとするわけだから,物件のように外見がいかにもロボット的であるなら,あえて機械的な音声にしたりするのかもしれない。この姿から峰不二子の声が出ても警告にならないような気もするし。

 それにしても,日本語の場合はカタカナでしゃべればロボットか外人になるわけだけれども,他の言語だとそういう区別ないんでありましょうか。字体を変えるくらいか。
 してみると,日本語というのは文字も含めて便利な言語なんであるなぁ。


 新潟市のゴミ分別方法が平成20年6月から変わったんでした。それで有料化されたりする部分もあったので,大きなゴミは分別方法変更前に捨ててしまおうという動きがあったわけでした。
 そんな時期にごみ収集所の前で見かけた機械であります。

 見える文字が「National」「ワープロパソコン」。
 むぅ。この形体からすると,昔懐かしい「MSX」というやつのようであります。何それ。詳しく知りたい。という方はまぁ検索でもしていただくとして,MSXというのは簡単に言うならば四半世紀ほど前にあった家庭用パソコンの規格であります。

 パソコンの世界で20年も前というと,もう室町時代くらいな感じでありますね。
 そんな前のパソコンを今まで大事にとっておいたわけでありますけれども,今回ゴミ有料化にともない,ついに捨てる決心をしたと。そういうことだと思われるんでした。まぁ単に押入れの中に眠っていたのを引きずり出しただけかもしれませんが。

 そういえば,私の部屋の押入れの中にも最初に買ったパソコン「FM−7」が眠っているなぁ。使いようも無いけれども,なんとなく捨てるには忍びない感じもするし捨てる機会を逸してしまったし,まだしばらくは押入れで眠るのだろうなぁ。


 そのワープロパソコン,テーブルと傘も同時に捨てられたようであります。傘が
「ま,これからはゴミ同士だし,処理場まで仲良くしようカサ」
と言っているのに,ワープロパソコン君は
「い,いや。ボクは一応君たちと違って機械だし…」
とかなんとか,伏し目がちに目をそらしながら答えているような感じであります。
 本当は仲間になりたいのに,不器用なワープロパソコン君であります。


 オマケ。某スナックのカンバンであります。
「テレビデスクで飲んで,歌って,踊って楽しく…」

 むぅ。テレビデスクというと,テレビを置くための台でありましょうか。そんな台の上で飲んだり歌ったり踊ったりして…楽しいんでありましょうか。
 いやでもお立ち台みたいで,バブル期を思い出せて楽しいのか? テレビ台が,これからのとれんでぃーなのか?

 ということでは多分なくて,テレビデスクというのはレーザーディスクとかVHDとか,そんな類のやつではないかと思われるでありますね。
 もうその辺の言葉自体がすでにハルカカナタのような気もしますけれども。
 あるいは,これは実は人類初・最先端の技術であって,遠隔地同士でビデスクを行なう「テレ・ビデスク」というメカなのかもしれませんが。何だ,ビデスクって。

 まぁ,テレビ台でもレーザーディスクでもテレ・ビデスクでも,飲んで歌って踊って楽しくなれれば何でもOKなわけでありますね。

「サイバー配管」は新潟市西区・小針が丘あたり。
「ゲートキーパー」は新潟市西区・小新あたり。
「ワープロパソコン」は新潟市中央区・長潟あたり。
「テレビデスク」は新潟市北区・松浜東町1あたり。