自家用物件

自家用物件



 こちらは,某タクシー会社の駐車場というか待機所というか,車が停められるそういうスペースに掲げられたハリガミであります。

「自家用車の駐車は禁止す」。
 タクシー会社さんでありますから,内容としては「ここは業務用の車を停めるところであるから,社員は自分の車を停めないように」ということだと思われるわけですけれども,やはりちょっと気になるのは「禁止す」でありますね。

 これは,意図した「禁止す」なんでありましょうか。それとももともとは「禁止する」であったのに「る」が消えてしまったのか。でも「る」を書くにはちょっとスペースが狭いような気がするから,やはりあえて「禁止す」としているようではあります。

 しかし「駐車は禁止す」というのは日本語としてどうなのか。もちろん,伝えたいことは十分に伝わってはいるわけですけれども。
「禁止する」と書きたかったのだけれども途中でスペースがなくなってしまったのでやむを得ずそこでやめてしまったのか。または「禁止です」の「で」を抜かして書いてしまったのか。

 それとも,社員に対する物言いであるからちょっと上から言っている感じを出したかったんでありましょうか。「駐車は禁止す!」はまぁなんとなく上からっぽいですけれども,普通は「駐車を禁ず!」のような気がするでありますね。

 あるいは,逆に上からではなくて対等もしくはやや下から「駐車は禁止ッス。お願いしますよ,センパーイ」という姿勢を出そうとしているのか。誰が先輩なんだかよくわかりませんけれども。

 はたまたひょっとすると,これはある世代以上にはもはや宇宙語にしか聞こえない「ギガントカワユス」的な言葉なんでありましょうか。「チューシャハキンシス」というのは,ある特定の人たちが聞けばもっと特別な意味合いがあったりするんでありましょうか。ギザワケワカランですけれども。


 雪の降る地方では季節ごとに車のタイヤを替えたりするのでタイヤが余分にあるわけですけれども,その保管場所や保管方法というのには苦労したりするんでした。私はここ数年「雪が降ったら車は乗らない」ことにしているので,タイヤは替えていないんですけれども。ずっとほったらかしにしてあるから,もうあのスタッドレス使えないんだろうなぁ。まぁそれはともかく。

 写真の物件は,さるお宅の玄関先に置かれたタイヤ一組であります。こちらのお宅では,交換したタイヤはとりあえず重ねて玄関先に置いているようでありますね。
 それで,どのタイヤがどの位置だったかわからなくならないように,それを示すテープを几帳面に貼っているのがちょっとかわいらしいと思ったわけなんでした。

「右F」「左F」「右R」「左R」の「F」はフロント(前),「R」はリア(後)だと思われるわけですけれども,この表記・方法を完成させるまでには様々な試行錯誤が繰り返されていたんではないかと思ってしまうわけでした。

「右前」「左前」「右後」「左後」
…漢字だけだと,ちょっとダサいな。
「R前」「L前」「R後」「L後」
…これだと,「前」と「後」の英語がわからないヤツみたいで,やっぱりダサいな。
「RF」「LF」「RR」「LR」
…これ,タイヤつけるとき絶対間違うな。
「右F」「左F」「右R」「左R」
…んー,まぁ,これかなぁ。やっぱり。

 というようなことがあったかどうかは知りませんけれども,そういった苦悩の末にこのテープが貼られているのかもしれないと想像すると,たとえ玄関先に放置されていたとしても泥棒さんだって盗んだりはできないだろうと思われるんでした。泥棒さんはそんな想像しないかもしれませんが。
 むしろ泥棒さんよりは,近所の悪ガキがテープを貼り替えたりしないだろうかというのが心配ではあります。まぁ,たまにはタイヤをローテーションさせるのもいいかもしれませんが。


 こちらは低いブロックで囲われた駐車場であって,おそらくこのカンバンには「まだ駐車スペースは空いています」という意味の「空有り」が書かれているんであろうと思われるんでした。

 しかし,果たしてそうなのか。
 このブロックの向こうには「穴」があいていて,不用意に入るとはるか下まで落ちてしまうのかもしれない。
 あるいは,手前に「窪」みがあることを警告しているのかもしれない。
 あるいは,この駐車場には「窓」があるのかもしれない。青空駐車場に窓が必要かどうかわかりませんが。
 あるいは…あるいは…んー。
 …ここで使える穴かんむりの字って意外と無いな。もう窮してしまった。

「禁止す」は新潟市中央区・礎町通2あたり。
「LR」は新潟市中央区・長嶺町あたり。
「穴有り」は新潟市中央区・翁町2あたり。