意見物件



「ねえかあさん ここはとめてもいいところ?」
と,お母さんの意見をきいているようであります。
 おそらくは「お母さんに連れられて散歩をしている子どもが,路上駐車をしている邪魔な車を見てその是非を問うている」というシチュエーションであろうと思われるわけですけれども,果たしてそうなのか。

「マザコン気味の息子(23歳)が,お母様を車の助手席に乗せて初めての土地へ来たのだけれども,駐車スペースが見つからない。それでお母様の意見をきいている」
というシチュエーションかもしれないんでした。そんなこと,お母様が知っているはずもないのに。

 あるいは「ここ」というのは「場所」ではなく「状況」かもしれないでありますね。

「少年ふたりがにらみ合っていて,今にも殴り合いのケンカが始まりそうな状況。そこに通りかかった,ケンカの仲裁が三度のメシより好きな青年。その仲裁好きが原因でトラブルに巻き込まれることもしばしばであり,母親からよほどのことがない限り仲裁してはいけないと言われていたので,心の中で母親に意見をきいてみた」
というシチュエーション。仲裁好きの青年というのがいるかどうかわかりませんが。

「この春大学に合格してアパートで一人暮らしを始めた青年。ガールフレンドもできて,今日はその子を初めて自分の部屋に招待。話し込んでいるうちに,終電の時間。するとその子が『今日,泊めてくれない?』。青年はドギマギしてしまって,故郷の母親の顔を思い浮かべて…」
というシチュエーションも,よろしいかもしれないでありますね。


 こちらは「レストスナックもか」さんのようであります。そして奥には「麻雀もか」さんもあるようで,多角経営(というほどのもんでもないかもしれない)しているようでありますね。

「もか」というのはおそらく店名だと思われるわけですけれども,それよりもなんだかその多角経営ぶりに驚嘆の声をあげているように読めてしまうわけでした。

「え。お前,そんなにたくさん店やってるの? へー。 レストスナックもか!? 麻雀もか!?」
 しかもその「もか」が大きく強調されているので,すごく驚かれているような気がするんでした。
 そしてそれは驚きを通り越して「そんなにやって大丈夫なの? もっと小さくしておいた方がいいんじゃないの?」というやっかみ半分のご意見のようにも聞こえてきそうなんでした。


 こちらは「へあーさろん はだ」さんであります。髪の毛を扱うのかスキンケアをするのかハッキリしてもらいたいような気もするわけですけれども,まぁヘアーサロンとしては,そのどちらも扱うのかもしれないでありますね。

 そしておそらく「はだ」は肌ではなくて羽田さんとか波田さんというお名前なんではあるまいかと思われるんでした。言わずもがなですが。

 いやしかしこれは名前ではなく,何か「へあーさろん」というものについて意見があるということの表明なのかもしれないでありますね。

「へあーさろんというのはだな。単に髪を切るという場所ではないのだよ。いいかね,あなたがた。『へあーさろん』というものは,だ。サロンという名の通り…」
「つまり,『へあーさろん』はだ。人々の社交の場としての…」

というようなご高説が延々続くのかもしれないわけでした。

「かあさん」は新潟市東区・松園1あたり。
「もか」は新潟市北区・松浜本町2あたり。
「はだ」は新潟市北区・松浜7あたり。