ホトケ物件



  飛び出し注意のカンバンというのは,街を歩けば見ないことがないほどに数多く存在するわけですけれども,通常は飛び出す子どもと急ブレーキをかける車のイラストが描かれていたりするんでした。
 その場合,子どもはまだ車にひかれてはいないわけでありますね。次の瞬間にどうなるかはわからないですけれども。

 上の物件ではそういったイラストは描かれていないようでありますけれども,その代わりにまさしく衝撃的な文字が書かれているんでした。
「ドッカーン」
 これはやはり…ひかれてしまったんでありましょうか。音からして,10メートルくらいは飛ばされていそうであります。

 まぁ,絵が描けない場合は文字でインパクトを与えるというのは常套手段であります。しかし「ドッカーン」はどうなのか。
 子どもが「ドッカーン」されてしまう状況をカンバンにするというのは,PTAとしては心が痛んだりしないんであろうか。などと思ったりしてしまうわけでした。

 そして,無いように見えたイラストらしいものも,上のほうに存在するんでした。こちらであります。


 何が描かれているのかもうひとつよくわからないですけれども,これはやはり…タマシイなんでありましょうか。「ドッカーン」によって子どもはタマシイになってしまったということなんでありましょうか。

 そうなってしまったからには迷うことなく成仏してほしいわけでありますけれども,学校が「立仏小学校」だから大丈夫でありましょうか。いや単に地名が立仏であるというだけでありますけれども。

 しかしまぁ,インパクトがあり,とりあえずカンバンとしては成功しているような気もする物件ではあります。


 こちらは,さる電器屋さんの店頭であります。丸い蛍光灯が縦に掲げられているんでした。

 まぁ,おそらく以前は行灯型のカンバンであったんであろうと想像できるところではあります。しかし果たしてホントにそうなのか。と思ってしまうんでした。カンバンとしての機能を失ったんであれば,中の蛍光灯くらいはずしておいてもよさそうであるし。

 してみると,これそのものが商品なんでありましょうか。
 もちろん普通の蛍光灯自体はお店で売っているんでしょうけれども,あえて縦に置いてあるということは,特殊用途に使う蛍光灯なんではあるまいか。と思ったりするんでした。

 この電器屋さんには時折,パンチパーマ的な髪型で額にポチがあって一枚布の衣装を着て合掌した人が訪れるんでありますね。その人がこの丸型縦置き蛍光灯を買っていくと。

「こんちわ。おやじさん。いつもの,ある?」
「いらっしゃい。ございますよ。もうそんな季節でしょうかね」
「うん。やっぱり年末が近くなってくるとね。新しくしておきたいしね」
「明るい方が神々しいですからねぇ」
「最近は便利になったよね。昔は自力で出してたんだけど,これがあると後光出すのも力いらないから」
「ほぉ。あれは力がいるんですか」
「まぁ,力っていうか精神力みたいなもんだけどね。疲れるんだよね」
「ははぁ。そんなもんですか。」
「これを背負ってスイッチ入れればみんなありがたがってくれるんだから,楽になったもんだよ」
「なるほどねぇ…。それじゃ,いくつ差し上げましょ?」
「わかってるくせに」
「後光だけに…五個でしたね?」
「ぷぷぷぷ。その通り!」
「相変わらず,くだらない理由ですねぇ」
「ほっとけ!」

 ということで,ホトケ様が「後光装置」を買いに来るのかもしれないわけでした。来ないか。

 単にカンバンを新しくしている最中であって,「ナショナル」を「パナソニック」にするとかそういうことなのかもしれませんけれども。違うか?

「ドッカーン」は新潟市西区・寺地あたり。
「後光装置」は新潟市南区・白根あたり。