両刀物件
両刀物件
ご覧のように,送水口であります。まぁ特にこれといって特徴もない感じですけれども,ちょっと何か違和感を感じる。それが何なのかというと,おそらくは壁が独立しているということだと思われるんでした。
街で見かける送水口には外見的にごく大雑把に分けると2種類あって,地面から筒が生えているような独立型と,建物の壁面に埋め込まれている埋め込み型があるんでした。あくまでも私の分類ですけれども。
で,物件の送水口は,独立型でありながらも壁に埋め込まれていると。両方の特徴をあわせもっていると。そのあたりに違和感を感じてしまうようなんでした。
送水口の形態以前に,壁が単体でモノリスのごとく立っているということ自体がまぁちょっとヘンな感じもするわけですけれども。しかも,ちょっとオシャレに2本線が入っていたりするあたりもなおさら。
あるいは,送水口というのはもともとこういうものなんでありましょうか。独立型の筒むきだしのやつはまだ子どもなんであって,成長するにつれて壁が生えてくると。そしてまわりの壁がどんどん大きくなっていって,最終的にはビルになったりするのかもしれない。しれなくないか。
などということを考えつつ,やはり後ろのことも気になるので,後ろへまわってみたりするわけでした。するとこんな感じ。
…うーん。なんというか,ちょっとダマされた感じを受けてしまうんでした。ダマされたといっても,悔しいんではなくて,笑ってしまうというダマされ方。
前の方はピシッとしたタキシードなんだけれども,後ろを向くと背中から尻までパックリ穴があいているというような,そんなコントを見ているような感じであります。
ある年代の人には「走るデロリンマンを後ろから見たような」でもいいかもしれない。よくわからんか。デロリンマンは前から見てもヘンですが。
それにしても,どうしてこうなっているんでありましょうか。もともとはビルの一部だったものが何かの理由で取り壊され,送水口だけそのまま残したのか。
この送水口を取り除こうとすると作業員が原因不明の病気になったりして,動かせないのか。
この送水口は鎌倉時代創建のもので,実は県重要文化財だったりするのか。
病気の子どもが病院の窓からここを見ていて「あの送水口が散ったら僕の命も終わるんだ」と言ってるので手をつけられないのか。散るのか?
まぁその成因はどうあれ,やはりその存在自体にちょっと魅かれてしまう物件ではあります。それはやはり,ひとつの面からだけでは測れない,複数の面をあえて持っているというオモシロさから感じるもののような気がするわけでした。
独立型でありながら埋め込み型である。表はオシャレだけれども裏は尻丸出し。
そういった二極性をあわせもつこの物件,人間でいうならば男装の麗人だったりヒゲの生えたママさんだったりするんでありましょうか。
確かに,彼ら彼女らもある意味とても強烈な魅力を持った存在であるような気がするんでした。
今のところ,幸か不幸かそういう知り合いは私にはいませんけれども。
でもそんな知り合いがいてもいいかもしれないわねぇ。
「両刀送水口」は新潟市中央区・西堀通3あたり。