マドロス物件

マドロス物件



 道路というにはあまりに小さく,他人の家の軒先を歩いているような,文字通りの小路にひっそりとたたずむカンバンであります。

「ガス管に 止めないで下さい」の文字と,足あとを×マークで消した絵。

 んー。何かを禁じられているらしいんでありますけれども,はたして何を禁じられているのか。
 いやまぁ,文字を読めば「ガス管に止めること」を禁じていることはわかるんですけれども。それでも,何を止めてはいけないのかがわからないんでした。

「とめないで」というところから考えると,駐車をするなということかなと思えるわけですけれども,路面にはガス管のようなものは見えないし,わざわざ車が入ってくるような道でもないような気がするんでした。
 中央に見える管がガス管なんでありましょうか。これはすぐに地中に潜っております。

 足あとに×マークというのをあえて描いているところから考えると,「足を止めるな」ということなのか。ここで立ち止まると,ガスが爆発してしまうんでありましょうか。
 あるいは,このガス管は見る人が見れば足を止めて見入ってしまうほどの名品であって,毎日この辺は押すな押すなの大混雑なんでありましょうか。

 でも「ガス管に止めるな」であるから,「このガス管に足をのせるな」と考えるほうが自然のようでもあります。しかし,いるんでありましょうか。ガス管に足をのせる人が。足をのせて何をするのか。

 いるとしたら,マドロスさんあたりでありましょうか。ズタ袋を肩から下げて横縞のシャツを着て船員帽をかぶってパイプをくわえたマドロスさんが,片足をこのガス管にのせてカッコつけながら霧笛を聞いていたりするのかもしれない。
 ここはだいぶ港からは離れてますが。でも一応新潟も港町だし。異国情緒はまったくないけれども。


 こちらは有料駐車場であります。駐車場と歩道の境界には,ガードレールというかガードポールというか,車止めというのか単に柵でいいのか,なんて言うのかわかりませんけれどもまぁそういうものが設置されているんでした。とりあえず,以下は境界柵と呼びます。

 その境界柵が,幅小さめの手前のやつを除いて,他はやけに低くなっているんでした。手前のものがノーマルな高さであると思われるわけですけれども,他はもともとこういう高さなのか。それとも無理矢理地中に埋めたのか。

 駐車場を作るにあたり,歩道との境界柵を設置してコンクリ製の車止めも設置したんだけれども,車止めまで車をバックさせると境界柵にぶつかってしまうということに気づかなかったということだったりするんでありましょうか。
 それで,苦肉の策として境界柵を低くしたと。それでもまだぶつかってそうではありますが。

 あるいは,もともと全部ノーマルな高さの境界柵だったんだけれども,夜な夜なマドロスさんの団体がやってきてみんなで足を柵の上にのせるもんだから,いつのまにか低くなってしまったのかもしれないでありますね。しれなくないか。


 街を歩いていると突如姿をあらわす「おちゃらか」。いや実際は小さな公園の入り口にあたるところにある腰掛けのようなものであるわけですけれども,なぜに「おちゃらか」を図解入りでこういったところに表示する必要があるのか。

「おちゃらか」を知ってる人にはわかるけれども,知らない人が見たら何の暗号かと思ってしまいそうであります。現文明が滅んだ数千年後に次文明の人たちが遺跡としてこれを発見したら,何を意味しているのか解読できるでありましょうか。

 そんなわけで,さすがのマドロスさんもこの腰掛けに足をのせてカッコつける気にはならないだろうなぁと思ったりしたわけでした。

「ガス管」は新潟市中央区・東湊町通1ノ町あたり。
「境界柵」は新潟市中央区・弁天2あたり。
「おちゃらか」は新潟市中央区・柳島町1あたり。