キメ物件

キメ物件



 ゴミ集積所というのはやはりハリガミの宝庫であって,そのハリガミたちは今までにも数多くの物件になっているわけでした。それでもなお,ゴミ置き場のまわりには私を引き寄せるハリガミがまだまだ眠っているようであります。

 そんなわけで,上の写真。「生ゴミの収集は毎朝キメタ日に出して下さい」ということで,ツッコミどころとしてはやはり「キメタ日に出す」というあたりでありましょうか。
 普通であれば「決められた日に出す」と書かれているような気がするわけで,「キメタ日」ということだと各家庭が勝手に出す日を決めてしまいそうであります。
「うちは月曜日と木曜日に出す」「我が家は火曜日と金曜日と日曜日に出します」「拙宅では毎日出すでござる」というようなことになると,収集,いや収拾がつかなくなりそうなんでした。

 また,新潟の方言で「きめる」というと,「すねる」とか「いじけて不機嫌になり,押し黙る」というような意味があるんでした。もし,これがその「キメタ日」だとすると,なかなかゴミを出すタイミングがつかめなそうであります。大人になってから,キメるというのもあんまりなさそうだし。
 そして,ゴミを出す人が全員不機嫌だというのもなんだかイヤな光景であります。

 その他,「キメタ日」と言ってるのに「毎朝」とはどういうことか,とか「収集を出す」とは何か,とかいくつかの疑問点はあるわけですけれども,そんなことを考えているのはヘンクツな路上観察者だけであって,このハリガミの意図するところそのものは万人に理解できるはずなんでした。そこがまたハリガミの面白いところではあるんでした。

 ちなみに,このハリガミで私が一番好きなのは「出る日。」であります。なんかカワイイ。


 こちらもゴミの集積所でありますけれども,この人はその中でもアキカンに怒っているようなんでした。ゴミの捨て方というよりは,この辺ではアキカンのポイ捨てが多いのかもしれませんが。

「アキカン捨てるな」ということなわけですけれども,最後の「な」がパッと見,マンガ表現における「怒りマーク」のようにも見えて,マンガ世代としてはさらに怒りが増幅されて見えたりするような気もするんでした。そんなこともないか。

 そしてこのハリガミの一番の見所は,やはり「アサヒビールカン断り」という最後の一行でありますね。
 なぜ銘柄というかメーカーをキメうち,限定するのか。キリンやサッポロのカンなら捨てられてもいいのか。なにかアサヒビールにトラウマがあるのか。

 逆に,アサヒビールが大好きなんだけれども今は医者にとめられていてビールが飲めず,カンを見ると飲みたくなってしまうから拒絶しているんでありましょうか。
 あるいは,医者にとめられているんではなくて,何か願をかけてアサヒビールカンを飲まないようにしているのか。すなわち「アサヒビールカン断り」とは,実は「アサヒビールカン断ち」の書き間違いだったりしないのか。

 …などという,様々な妄想を膨らませてくれるゴミ置き場のハリガミたち。書かれている内容といえば「ゴミを捨てるな」「ゴミは決められた日に」という2点がほとんどであるにもかかわらず,尽きることの無いバリエーション。やはり,ハリガミの王道であります。

「キメタ日」は新潟市(岩室)・橋本あたり。
「カン断り」は三条市・石上2あたり。