どこでも物件

どこでも物件



 この物件には食事中に読むと不快感を感じたりする可能性もなきにしもあらずな表現が含まれておりますので,昼休みに弁当食べながら読んだりしない方がよろしいかもしれません。


 …ということで,写真は商工会議所だか商工会館だかそういった建物前に掲げられたノボリであります。あいかわらずシャッタータイミングが悪く,見えにくくて申し訳ないわけですけれども「どこでもトイレ」と書かれているんでした。

 まぁ冷静に考えれば特におかしなことが書かれているわけではなくて,おそらくは「買い物や観光のお客様が気軽にトイレを使えるよう,商店街各店でトイレを使えるようにしております」というような取り組みが行われているんではあるまいかと思われるんでした。

 そういった取り組みは私としても大歓迎であります。私も頻尿傾向というか頻尿であって,2時間がもたないので映画館で映画を観ることがないし。街を歩く際もトイレの場所を把握しておくことが必須であったりするし。学生のころ,冬場は授業の1時限がもたなかったりしたし。
 その苦労は日に2〜3回くらいしかトイレに行かない人にはわからないでしょうけれども,それはともかく。

 しかしひょっとするとこのノボリ,本当はもっと先進的な取り組みなのかもしれないでありますね。まさしく文字通りの「どこでもトイレ」であって,街のどこででもいつでも自由に立小便やら野グ,いやキジを撃ったり花を摘んだりしてもいいという,自治体の取り組みであったりするのかもしれないんでした。
 排泄を恥ずかしがらないおおらかな人間性をはぐくみ,本来生物の持つかぐわしい香りのする町並みを目指すと。

 確かに排泄を恥ずかしがるというのは人間だけであって,それは生物としては異常なことなのかもしれないわけで,それをおおっぴらにやってしまいましょう,生物としてのあり方をとりもどしましょうというこの取り組みは,実に有機いや勇気ある取り組みであるようなんでした。
 …ちがうか。

 これだけでもアレなので,日夜街中にフンをすることにおいてはプロである,犬に関してのカンバン3種オマケ。


「犬の糞 しまつ ください。」
というこのカンバン,「犬に糞をさせるのはまぁいいでしょう。しかし,その犬の糞は始末していってくださいね」ということだとは思いますけれども,本当にそうなのか。

 実はこのお宅は「犬の糞を始末する」ことを生業としているんではあるまいか。
 つまりは,「犬の糞 しまつ」がお店の看板であって,「ください。」というのは「その飯の種である犬の糞を私たちに譲ってください」ということであるという可能性も…ないか。


「ゴミのポイ捨て 犬のフンはしないで下さい 家主」
というこのカンバン。ある種定番ではありますけれども,「犬のフンをしないで下さい」と人間の自分に言われてもなぁ,という感想を持ってしまうわけでした。

 まぁ確かに「ゴミのポイ捨てはしないで下さい 犬にフンはさせないで下さい 家主」では間延びしてしまってリズム感がなく,カンバンとして美しくないわけですけれども。
「最低限の情報を盛り込めばカンバンとしての機能は果たす」ということを熟知していて,あえて文法は無視してリズムを優先したんだとすると,この家主さん,なかなかの使い手であります。


「犬のフンの始末は自分の手で」
というこのカンバン,内容自体はまぁ「自分の手だと汚いなぁ」というくらいのものでありますけれども,注目はその隣の壊れたカンバンでありますね。

 9割以上は失われて「駐 禁 尚 処」くらいしか読めないわけですけれども,おそらくは無断駐車厳禁という類のカンバンであったろうと思われ,そしてそのカンバンは壊れたまま放置されているんでした。

 つまりは,この駐車場の主にとっては「無断駐車」よりも「犬のフン」の方が一大事なんでありますね。無断で使われるよりも,愛する駐車場が汚されてしまうほうが悲しいと。主さんの,駐車場に対する愛情が感じられるカンバンであります。

「どこでも」は阿賀野市・中央町2あたり。
「ください」は新潟市中央区・上大川前通11あたり。
「しないで」は新潟市中央区・日の出2あたり。
「自分の手」は新潟市中央区・天神尾1あたり。


蛇足:

 それにしても,犬というのは人間の数万倍の嗅覚を持つと言われていますけれども,平気で自分または他犬のフンの臭いをかいでいるでありますね。それはもう,鼻で吸い込まんばかりに。あまつさえ,それを自分の身体に擦り込もうとしたりするし。

 してみると,あの臭いというのは犬にとっては少なくとも不快な臭いではないと思われるですね。むしろ心地よい臭いなのかもしれない。
 逆に,シャンプーとか石鹸とかで洗われるのを嫌がるわけで,あれはあの臭いがイヤなんではあるまいかとも思われるんでした。
 すなわち,犬にとってシャンプーされるというのは,人間が他人のウ○コを身体に擦り込まれるようなものなのかもしれないわけでした。

 いや,あくまで私がふと今回の物件を書きながら思っただけで,真実は犬に聞いてみないとわからないわけですけれども。誰か聞いてみたら教えてくださいませ。