それなり物件

それなり物件


「ゴミを無断で捨てないで下さい。 ※見つけた場合,それなりの処分をさせていただきます」ということなんでした。

 普通なら白い紙に黒のペンで無造作に書いてガムテープあたりで貼っておくような内容のハリガミであります。
 しかしこちらではわざわざ黒い紙に白で書き,雨にぬれても平気なようにビニールをかぶせ,さらに穴をあけて紐を通して固定までしていて,「無断ゴミ捨て許すまじ」というその決意のほどがうかがえるようなんでした。

 そしてその決意は文面にも表れていて,見つかった場合には「それなりの処分」をされてしまうということなんでした。

 しかし,「それなりの処分」というのはいったい何が行われるんでありましょうか。たとえば「自転車を放置しないで下さい。見つけたらそれなりの処分をします」ということであれば,その放置自転車の処分というのはある程度想像がつきそうでありますが。

 このハリガミの場合,相手がゴミであります。ゴミを処分するといったらそれはもう捨てるしかないわけで,しかも「それなりの処分」ということであれば,燃えるゴミは燃えるゴミの日に,資源ゴミは資源ゴミの日に,というように分別して捨ててくれるということなんでありましょうか。それはむしろ便利であります。

 まぁ,作者の意図としては「ゴミの処分」ではなくて「捨てた人の処分」をするということなのかもしれませんけれども。
 だとしても,「処分」というのはちょっと重い感じのする言葉ではあります。無断でゴミを捨てているのを見つかったら,プロレスラーみたいなオヤジが出てきて「てめぇら,人間のクズだ!ゴミだ!」と叫びつつ,機械の回転するゴミ収集車の中に投げ込まれてしまうんではあるまいかと思われるんでした。

「それなり」という言葉は,あんまり他人に真実を言いたくないときとか,ホントは何も決まってないときに使ったりする場合も多いでありますね。ごまかすというか,判断を相手にゆだねてしまうというか。
 だからこのハリガミの作者も,相手が強そうかどうか見極めてから処分を決めようとしているのかもしれませんけれども。


 オマケ。小さな本屋さんの入り口であります。「テレビでときどき話題になる 越後村上 三面川の鮭 写真集 1680円 見て読んで楽しんでためになる本 当店で販売中!」とのことなんでした。

「それなり」という言葉が入ってるわけではないですけれども,「テレビでときどき話題になる」,これがなんともよろしいでありますね。「ときどき」がちょっと小さくなっているあたり特に。
「いやまぁ,ホントにときどき,ときどきなんですけどもね,たまーにテレビで話題になったりね,するんですよね。うれしいですよね,川はすぐそこだしね。 え,この本の売れ行きですか? まぁそれはね,まぁね,んー,それなりですわ」

 というような,それなり感が感じられるような気がするわけでした。

「それなりの処分」は新潟市・本町通7あたり。
「ときどき話題に」は村上市・庄内町あたり。