任務物件

任務物件


 これはあの,コーンとかパイロンとか呼ばれるやつでありますけれども,ふたつのコーンをつなぐ器具の輪っかが頭にかぶせられております。

 手前の方は普通でありますけれども,奥のコーンは輪っかの上下で色が違ってしまっているんでした。下の方が白くなって,あたかも締められて血の気がなくなってしまったかのようであります。

 ここから導き出せる結論は,コーンというのは生きものであって,その心臓は先っちょの方に存在するということでありますね。違うか。

 手前のコーンは先輩で,奥は新米なのかもしれない。
「ああ。お前この輪っかハメるの初めてだっけ? 最初はキツイんだよなぁ。顔色悪くない? 早退する?」
「い,いえ。これも任務ッスから。自分,ダイジョブっす」
 という会話でもしているようであります。結局このあと新米は貧血で倒れて先輩に迷惑をかけることになるわけですが。


 こちらもふたり一組で任務中でありますけれども,新米ではなく若手の同期ふたりでありましょうか。
 ひとりはキッチリと赤の制服を着込んだマジメさん。そしてもうひとりは連結器具と模様を合わせたオシャレさんのようであります。

「オマエさぁ。仕事なんだからあんまりチャラチャラしてんなよ」
「いや,身だしなみに気を配ってこそ,仕事にもハリが出るってもんだろ?」
みたいな会話をしながらもお互いを認め合っている。そんな名コンビっぽいんでした。

 そんなふたりの一致した思いは,
(しかし,オレ達が守ってるこのブロックの板は一体なんなんだろう。でもまぁ,仕事だし)
ということなのかもしれないんでした。


 こちらはもう包帯だらけ。足元から傾いて,満身創痍であります。どんな過酷な任務をこなしてきたんでありましょうか。

 こんなになってもなお「こんなケガなんか,なんともねぇよぉ。オレは路上に立ってこそオレなんだ。路上に,路上に出してくれよぉ」とボス(誰だ?)に懇願して,多少は安全そうな繁華街の歩道に立たせてもらっているのかもしれないんでした。

 まぁ,車と酔っ払いとどちらが安全かというと一概には言えませんけれども。

 なにはともあれ,コーンのみなさんご苦労様であります。

「貧血コーン」は新潟市・上大川前通9あたり。
「おしゃれコーン」は新潟市・雪町あたり。
「包帯コーン」は新潟市・古町通9あたり。