肥満物件
肥満物件
遠目に,電柱の前にドラム缶でも置いてあるのかと思ったわけでした。でもドラム缶にしては色が地味だし,電柱と同化している感じであるなぁ,と。
ところが,近づいて徐々に遠近感が働いてくるようになると,感じではなくて実際に電柱の下半身であることが確認できたんでした。
これは…この根元の太さはどうなんでありましょうか。何か特殊な電柱なんでありましょうか。それとも私の注意力が足りないだけで,世の中の電柱というのは10本に1本くらいはこうなっているものなのか。
事故か何かで倒れかけた電柱を補強したんだろうかとか,素人が考えつくのはそれくらいですけれども,だとしても,こんなもはや取り返しのつかないような補強の仕方をするであろうかと考えてしまうでありますね。
補強だとすると,まるで天然記念物の巨木や巨岩を無理やり保存しようとしているかのような補強方法であります。ひょっとするとこの電柱は天然記念物なんでありましょうか。天然のコンクリ電柱というのもあんまりないような気もしますけれども。
あるいは,電柱というのは日々成長しながらあのように大きくなっていくものであって,この電柱は成長過程で脱皮かなにかの最中だったんでありましょうか。細い部分の下の方がちょっと白っぽくて,脱皮したてみたいな感じもしないでもないし。
それとも,逆にこの電柱はもう老化が始まっていて,中年太りになってしまったんでありましょうか。もうしばらくすると日本中の電柱に中年太りが始まって,道幅が狭くなってしまうのかもしれない。それはなんだか鬱陶しいなぁ。
こちらは,狭い通りに面した店舗兼事務所兼住宅と思われるお宅であります。なぜか,古びた体重計が通りに面して立てかけて置かれているんでした。
近寄ってみると,古びた体重計は一回りする寸前,90数キロを指して止まっているんでした。まるで,災害や事故の時刻を指したまま止まってしまった時計のようであります。
ある日このお宅の奥さんが体重計に乗ったところこのような数字が出てしまい,あまりのショックに半狂乱で体重計を壊してしまったのかもしれない。
でもすぐに冷静になった賢明な奥さんは「悪いのは体重計ではなく,太ってしまった私自身なのだ」と反省したんでありますね。そして「90キロは二度と繰り返しませんから」の誓いを胸に,自らへの戒めとして90キロ超を指した体重計を供養を兼ねて公開しているのかもしれないんでした。
※この物語はもちろん事実と異なります。たぶん。
「太り電柱」は五泉市・吉沢3あたり。
「戒め体重計」は新潟市・湊町通1あたり。