愛され物件
愛され物件
さる自動販売機であります。どうやら120周年を自らお祝いしているような文字が貼りだされているわけでした。
まぁ「愛されて××周年」とか「ともに歩んで○○周年」とかの言い方は割とよく目にするような気がしないでもないわけですけれども,この物件の場合はなんとなく違和感を感じるんでした。
それが何なのかと考えると,おそらく「あなたに」の部分なんでありますね。通常は「みなさまに愛されて」とか,不特定多数に愛されたりするわけですけれども,「あなた」というからには,その対象はこれを読んでいる「わたし」に限定されてしまうんでした。
「あなたに愛されて120周年」と言われても,私は自動販売機を愛した憶えもないし第一120年も生きていないんであって,それなのにいきなり「ありがとう」とお礼を言われても困ってしまうわけでした。
玄関を開けたら知らない老婆が立っていて「ありがとうねぇ。ありがとうねぇ。こんなに愛してくれてるなんて,わたしゃ知らなんだよぉ」と涙を流されているような感じであります。
それとも,私は私の知らない誰かの生まれ変わりであって,その誰かが120年前にこの自動販売機を愛したんでありましょうか。120年前に自動販売機があったかどうか知りませんけれども。
まぁ「愛されて120年」と「愛されて120周年」では微妙に意味合いが違っていて,「120周年」だとその年数とは関係なく愛してればいいのかもしれないですが。でも自販機やジュースを,愛するというほど好きになったことはないぞ。
しかし,昔はジュースも50円とか60円くらいだったような気がするのだけど,今や120円。それでも飲み続けられているわけだから,むしろ「愛されて120円」あたりにしたらちょっと自虐的でよろしかったのではないかとも思ったりするわけでした。よろしくないか。
「愛されて」は新潟市・善久あたり。