脆弱物件

　ある工場脇の，よくある緑の針金フェンスに，この看板は張ってあるのでした。何が当たると，何が倒れるのか，よくわからない。このフェンスはそんなにひ弱そうに見えない普通のやつで，そりゃ車でもぶつかれば倒れそうだけど…と思って周りを見ると，この看板の前は他の会社のトラックの駐車場になっているのでした。
　おそらくはそのトラックに対して「ぶつけんなよー」という牽制をしているんだと思うわけですが，この看板を書いた人は，どう書けばカドが立たないか，考えたんだと思いますね。
　いきなり「ぶつけるな」ではケンカになっちゃうんで，自分が弱者になってしまう道を選んだ。「ゴホッゴホッ。私は体が弱いんで，どうかこの前を通るときはゴホッ気をつけてやっておくんなさい。ちょっとでも触れようもんなら，ゴホッ，倒れちまいますから。ゲホッ。」という感じ。

　それとも，本当はこの看板は，当たると工場そのものが倒れてしまうという，「建物のツボ」なのかもしれない。今度ちょっと，体当たりしてみようかなぁ。