存在意義物件

存在意義物件


 路上観察の一分野にトマソンというのがあって,トマソンの中に無用門という分類があるわけです。簡単にいえば,「塞がれていて用をなさない門」のことなんですが,これもそのひとつですね。中の建物を壊す際に,門を塞いだんでしょう。ただ,無用門の場合,門の中に建物が存在していない場合,その価値が低いように思うわけです。この場合の価値というのは,価値がないことが価値なわけで,この物件では,門を塞ぐことによって「侵入禁止」の意志を表明している。いや,していたんですね。つまりは,ある時点までは有用な無用門だった。
 それが,まわりにあった塀を壊したところで,また無用門になってしまった。まわりには申し訳程度に針金が張られているんですが,入ろうと思えばいくらでも入れます。なのに,門は厳重に閉ざされているわけです。「一体俺はなんのためにここの守りを固めているんだ」という門の声が聞こえてきそうなのでした。