どっぺり坂


 さて。どっぺり坂であります。新潟の坂と言えば,どっぺり坂。
 東京なんかでは「○○坂」とか「××階段」とか名前のついた坂・階段がけっこうあるようですけれども,新潟市ではほとんど無いと思われるんでした。
 今現在私が知っているところでは2ヶ所でありますけれども,そのうちのひとつがこの「どっぺり坂」なんでした。

 けっして観光案内や名所案内ではないこのサイトでありますけれども,やはり避けては通れないところであります。


 坂と名がついていますけれども,階段であります。写真のように,名前を記した立派な碑がどーんと建っていたり周辺整備もきちんとされていて,立地的にもほぼ中心部ということで,一応新潟市の名所的な位置づけがされているんでした。
 まぁ,これを見に来る観光客というのもいないような気もしますが。

 この「どっぺり坂」というヘンな名前の由来については,ちょっと郷土的な知識を持った人にとっては一般教養となっているでありますね。

 かつて坂の上には新潟大学(旧制高校)の寮があって,学生はこの坂を下りて繁華街へ遊びに行っていたと。そして遊びにうつつを抜かしていると,落第(ダブる:ドイツ語でドッペルン)するハメになってしまうということから,その名前がついた。というのが一般的な説であり,一番よくできた話であります。

 その話からそうしたのかあるいは元々そうだったからその話になったのかわかりませんけれども,この階段の段数は,及第点(60点)にひとつ足りない59段になっているんでした。


 階段上からの景色。さすがに名所としようとしているだけあって,なかなかの眺望であります。新潟市内の階段上からの眺めとしては,やはり一番でありましょうか。

 私が生まれるだいぶ前の話としては,雪が積もると子どもたちはこの坂をソリやなんかで滑っていたと言いますけれども,ちょっと怖そうであります。

 手すりの支柱には,イカリの形が。んー,悪くはないけれどもちょっと気恥ずかしい造形であります。

 中ほどに大きめの踊り場的な平坦部分があって,そこから横に道路がのびていたりもするんでした。階段が全体として二段階になっているから「どっぺり」である,という説もあるようであります。

 さてこのどっぺり坂。新潟駅正面から大きな通りを道なりにまっっすぐ行くと行き当たり,坂を越えていくと海の方へ行けるんでした。
 当然,この坂を上れるのは徒歩の人のみであって車は上れないので,車は階段を迂回してヘアピン状に曲がった坂道をぐりんと上っていくんでした。


 そのヘアピン状の道路に沿った歩道に,ひっそりと階段があったりするんでした。
 ヘアピン歩道を,ほんのちょっとだけショートカットする階段。

 階段を上るのなら「どっぺり坂」を上ればいいし,ちょっと遠回りしてもなだらかな坂道を歩きたいのなら歩道を通ればいいわけで,この階段の存在意義というのがちょっとわかりにくいんでした。

 地元の人にとっては,このちょっとだけショートカットが意外と便利なのかもしれませんけれども。あるいは,立派な歩道が出来る前はこの階段がメインのルートだったのかもしれませんが。


 ショートカット階段を上から見たところ。まぁ,景色的にはヘアピンカーブの対岸が見えるだけであります。
 手すりの支柱にはやはりイカリをかたどったように見えなくもない造形が。んー,この辺もやはり「どっぺり坂」に遠慮している感じでありますね。

 しかし,私としては「どっぺり坂」よりもこのひっそりとした階段のたたずまいの方が好みでありますね。なんというか,謙虚な感じがよろしいんでした。

 全国的に有名な坂には,急で上るのが大変な「男坂」と,比較的なだらかでちょっと遠回りでも上りやすい「女坂」というのがある場合がありますけれども,この階段もそれに近い感じがあるように思えるんでした。

 つまりは,いわゆる「どっぺり坂」は「どっぺり男坂」であって,こちらのショートカット階段は歩道も含めて「どっぺり女坂」であると言えるかもしれないような気もしないでもないでありますね。

 これからは,個人的にこれらふたつの階段を「どっぺり男坂」および「どっぺり女坂」と,心の中で呼ばせてもらおうと思うんでした。

 新潟市中央区。