その1. 電通映画社のなり たち〜終戦まで

(中編・1999年7月21日)


視聴覚教育の発達と、電通活動写真部
  さて、電通の活動写真部(1928・昭3年には部へ昇格)が独立し、電通映画社の発足へと至る事情には、当時の国家による映画統制が多いに関連しているの ですが、その前に、参考文献の中に見うけられる発足以前の制作作品を、ご紹介しておきたいと思います。
(特に昭和10年〜30年頃の年代に関しては、実写の教育・文化映画に関しても、史料に見うけられたタイトルは 全て、挙げておこうと思います。逸脱する部分もありますが、ご了承ください)
 

  大正前期には一般興行映画の影響調査や推薦・認定などに止まっていた文部省も、関東大震災の記録映画を皮切りに、自ら映画を企画するなど、積極的な「映画 教育」活動を始めていました(文部省企画による最も初期のアニメーションには、山本早苗作画 による大正15年「壷」があります)。
 昭和3年頃にはフィルムライブラリーが各所に開設、積極的な上映活動が行われ、また16ミリによる映画制作が 始まったこともあって、短編の啓蒙・教育・文化映画が数多く作られはじめました。

  電通の活動写真部も当然この波に乗り、1934(昭9)年には、山本早苗氏作画によるアニメーション映画「との ちゃんのいたずら」(1巻11分)を制作しています。(余談ですが、この映画は筆者の調べた限り、電通写真課〜映画社の歴史の中で 登場する最初のタイトルでもあります。それがナント、山本早苗氏のアニメーションだったと は…!)

  次いで山本早苗氏とは、 1936(昭11)年「おいらの非常時(無敵正義軍)」(1巻8分)、 1937(昭12)年「漫画のマン吉(亀さんの報恩)」(1巻)と、計3作が 記録に残されています。
 

  さて、アニメーション以外の作品にも触れておきます。
 電通活動写真部は、当時の大毎、東日という二大学校巡回映画連盟の企画による第1回児童用劇映画として、 1935(昭10)年「お山の大将」を制作。続いて同年「非常ラッパ」、1936(昭11)年「雪 晴れ」「五月晴れ」「龍神祭」(翌年トーキー化)、1937(昭12)年「わ ん公日記」、1938(昭13)年トーキー「みくにの子供」と、 同連盟の児童劇映画を着実に制作。
 この全ての映画を演出した浅野登氏(後に博士と 改名)が、活動写真部の人間だったのか否かは不明ですが、記録・ニュースから始まったこの部が、短編ながら劇映画も制作できる体制を確立していたことは、 この事実からうかがうことが出来ます。

  なお、1936(昭11)年6月、戦時通信統制により、通信部が同盟通信社に強制移譲させられた結果、電通はここで広告専業の会社となります。ニュース映 画も併せて譲渡したため、活動写真部は映画部と改称、まさに短編・文化映画をその活動の中心に据えた頃ではあった訳です。

 
映画法と、蒲田スタジオの建設
 
  そして、いよいよ映画法です。日本最初の“文化立法”と称された映画法の公布は1939(昭14)年。その内容は、映画製作者の登録制や、劇映画脚本の事 前検閲などの項目が含まれていましたが、そのひとつに、“文化映画の強制上映”がありました。
 これにより、昭和15年7月1日をもって、文部省の文化映画認定を受けた一巻250メートル以上の文化映画 が、全国の映画館で強制的に上映されることに決まったのです。

 それには、上映されるべき“文化映画”が存在することが前提となります。年間数千本とも勘定できるこの 需要を見越して、文化映画会社を名乗る会社が数々出現したようですが、電通映画部も、これで活気づく結果となったのでしょう、昭和14年より年間6本の恤 兵銃後奉公映画を制作し始め、翌15年には、“東洋一のスタジオ”建設を目指し、東京蒲田に500坪余りの土地を買収登記しています。
 

 そして、1941(昭16)年6 月、蒲田スタジオが完成。
 撮影設備は勿論のこと、特に現像設備は当時日本一と謳われ、松竹大船作品の大半を受注。そしてこれにより、電 通の文化映画自主制作は急増し、1941(昭16)年に、電通映画部で制作された作品をみると、婦人公論社との提携「生活文化シリーズ」「六〇〇万人の台所」「行商部隊」「強く育てよ」「南部の娘」「女ばかり の村」など、この年だけで26本にも上ったそうです。やはり、映画法による文化映画政策の時流の賜物だったのではないでしょうか。

 ちなみに、この頃制作された、他の恤兵銃後奉公映画のタイトルも、挙げておきます。
 「靖国神社の英霊に捧ぐ」「神国日本」「海軍 測量船」「若き産業戦士」

 
 
(後半へ続く。まだまだ続きます)
文中の蒲田スタジオ写真は、山田耕策氏提供による、電通映画社「三十年の歩み」より、転載しました。

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